シンガーの本質

シンガーソングライターという言葉が一般的になっている現在の音楽業界。自身で歌い、そして詞曲を含めた楽曲製作に携わるという形で活動しているソロアーティストが、数多く見受けられます。自分で表現したいことがあって、その手段として作詞作曲を手がけるというのは、表現者として起こってしかるべき欲求だと思うので、こういった形のミュージシャンが増えた理由に関して頷けます。インディーズで活動していた後に、メジャー契約する人が増えたのも、また間接的な要因であるでしょう。

ただそういった流れとは別に、歌うことに重点をおいたシンガーもまた存在します。全く楽曲製作をしないというわけではないのですが、曲を作ることよりも歌うことに重点をおいたシンガーがこれに当たると思います。自身で曲を書かないことで生まれる利点は、ワンパターンにならなくて済むということ。違った作家が書けば、当然のことながら毛色の違った楽曲が挙がってくるので、マンネリズムに陥らないというメリットはあります。ただし歌うことに専念するということは、どんな曲でも歌いこなせる圧倒的な歌唱力が必要になってきますし、作品の魅力を最大限に引き出す為の表現力も重要だと思うので、そこそこ歌えれば誰にでも務まるというものではありません。

シンガーとして、真っ先に名前が浮かんできたのはCrystal Kay。彼女の場合、毎回のように違った作家と組んで、作品を発表してきました。ポップス、ソウル、R&B、ヒップホップ etc…、ジャンルも様々で、バリエーションにも富んでいると思うのですが、彼女の凄いところは、どんなジャンルの曲を書く作家と組んだとしても、楽曲を自分のものにしてしまっていることです。人の曲を違和感なく自分のものに出来るということ自体、天性の才能と言ってもいいかもしれません。ただ最近は自分でも曲を手がけているらしくて、今後は益々バリエーションが広がりそうな予感がします。

ボーカルに表現力があれば、このような形での活動は可能だと思います。次にどんな作品が生まれるか分からないという点において、シンガーというのは、非常に面白い存在だということが言えるでしょう。今後に期待できそうなシンガーとしては、ユンナを挙げたいと思います。彼女も歌が巧いですし、伸びやかな歌声が生きる楽曲と巡りあえば、数々の名曲を生み出してくれることだろうと思います。